抄録
我が国では人口減少及び少子高齢化社会が進む中、1998年以降の国土計画において、行政のみならず住民が地域づくりの主体として公共サービスの供給側に参加していくことが目指されている。こうした住民の町内会活動やボランティア活動といった社会参加活動を促すことにより、一人当たりの活動力を高めることが期待される。本研究では、そうした社会参加活動の中でも地域社会への還元度合いの高い活動を地域貢献型社会参加活動(以下、地域貢献型)と新たに定義した。地域貢献型の重要性が叫ばれて以降、地方分権の進展や財政圧迫、東日本大震災など、我が国の社会情勢は大きく変化し、価値観や働き方も多様化してきた。そこで、今後の地域貢献型の創出を考える上で、全国を対象とする大規模調査による4時点15年間の分析から、過去から現在にかけて地域貢献型の実態がどう変遷したのか把握を試みた。その結果、活動の実施要因は15年間を通じて大きな変化がみられず、4時点に共通して年齢や学習・自己啓発活動といった生活行動の影響力が強いことが明らかとなった。地域貢献型の中でも具体的な活動別に活動形態をみると、町内会をはじめとした団体に加入せず活動する層が大きく減少していることや、15年間の変遷を時代・年齢・世代に分解した分析からは、進学や子育てといったライフステージと行動の関連性などが明らかとなった。