抄録
国土交通省は、AI、IoTなどの新技術や官民データをまちづくりに取り入れることにより都市・地域課題の解決を図るスマートシティ関連事業を推進している。群馬県嬬恋村では、2018年の本白根山の水蒸気噴火、2019年の台風19号による水害、わが国では2020年からの新型コロナウイルス感染の被害を受けた。そのため、嬬恋村では、安全・安心なまちづくりを目標に、防災・感染症対策のための情報提供システムの開発に取り組んでいる。本研究の目的は、嬬恋村の観光客を対象とする情報提供システムに関するアンケート調査を実施し、災害・防災情報、感染症情報を提供する手段、提供する情報内容の意向を把握し、情報提供による観光客の安全・安心感、来訪意向の変化を分析することである。アンケート調査は、過去5年以内に嬬恋村に訪れたことがある人を対象とし、ウェブ上で実施した。観光客の訪問意向を目的変数に設定した数量化論理II類による分析から、情報提供により嬬恋村への来訪回数が増えるという意向は、居住地が埼玉県、神奈川県、東京都の人、コロナ感染対策に関心のある人、情報機器で情報を得たい人、コロナ感染により観光等の外出の減った人、嬬恋村への来訪経験の多い人であることがわかった。加えて、観光客の意向を踏まえた情報提供システムの開発、システムの管理と運用、開発後の展開と課題について報告した。