抄録
我が国は人口減少に伴う低未利用地の増加や気候変動に伴う水害リスクの増大といった課題に直面している。こうした課題に対応するため、近年グリーンインフラの取り組みが推進されている。グリーンインフラ導入の目的の一つに「低未利用地の適切な管理」というものがあるが、どのように低未利用地へのグリーンインフラの導入を推進するかについて未だ不明瞭な点が多い。そこで本研究では、将来の低未利用地、とりわけ空き家からグリーンインフラへ転換した時の効果を、雨水流出量に着目して、定量的に評価した。対象地域である横浜市侍従川流域において、2040年の空き家数を予測し、空き家の75 %をグリーンインフラに転換した場合、6.6 %の雨水流出を抑制することが推測された。そして雨水流出抑制効果のみを便益とし、空き家を除去し、グリーンインフラへの転換を試みるというシナリオについての費用便益比は18.1 %であり、グリーンインフラの他の便益を積み重ねることにより、費用を上回る便益が得られる可能性を残すものであると言えよう。