抄録
公共空間における利用者行為の多様性を高めるためには、利用者個々の私的行為を拡張することが重要である。本研究の目的は、公共空間の利用促進における中心理論かつ手法であるプレイスメイキングをサービス科学領域において理論的枠組みを提供している価値共創理論と照合することによりプレイスメイキングの理論的課題を抽出し、利用者の公共空間に対する認識から私的行為の拡張性を高める公共空間マネジメント実践のあり方を展望することである。文献調査によりプレイスメイキングの理論体系と公共空間利用者の認識を分析し、本研究の成果として以下の2点を明らかにした。1点目に、サービス・ロジックの活用可能性を見出すことがプレイスメイキングの理論的課題であることを明らかにした。これは、現在のプレイスメイキングの理論体系はサービス・ドミナント・ロジックに通じているものの、プロバイダーと顧客との直接的相互作用を価値共創概念に持つサービス・ロジックとの関連性が見られなかったことによる。2点目に、利用者がそこで何ができるかを直接的に明示しない無主性の高い公共空間マネジメントが、私的行為の拡張に貢献しうることを明らかにした。合わせて、闘争としてのサービスという考え方を取り入れることと、他利用者との直接的な相互作用に配慮することが、無主性の高い公共空間マネジメントに有用となる可能性が導かれた。