実践政策学
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幹線鉄道整備に関する財源関係諸課題の整理と主要論点の抽出
表面的な受益者負担論を脱却した整備財源の方向性
波床 正敏
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2023 年 9 巻 2 号 p. 189-198

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抄録
近年、整備新幹線の完成も見えつつある中、在来幹線鉄道のかなりの部分をカバーする基本計画の建設に期待する声も聞こえる。だが、新規着工には財源の課題が大きい。新幹線建設を含む幹線鉄道整備には種々の課題があり、様々な要因が複雑に絡み合っている。そこで、本稿では幹線鉄道整備における種々の課題を提示するとともに、それらの相互関係を開発利益還元の観点で分析し、主要課題に対する解決の方向性の案を示した。その結果、(a)根元受益や交通税の徴収は形を変えた利用者負担なのであまり適切ではないこと、(b)国鉄時代から現在までの新幹線沿線地域は建設負担が十分でなく沿線の税収の一部を財源化すること、(c)時期による負担の不公平を平準化するシステムが必要なこと、(d)総合交通体系の視点から貨物輸送・航空・地域交通などに関与することでの幹線鉄道整備資金調達の可能性、(e)在来線改良の手段として新幹線の暫定整備計画の適用を容易にする、(f)沿線負担を建設延長ではなく設置駅数に比例するような算定方法に変更すること、(g)区画整理事業の理論的枠組を参考に、政府の通貨発行(減歩相当)により幹線鉄道を整備(公共事業用地の供出相当)し、国土の価値向上(開発利益の発生)が一体的に生じるとみなす制度設計の可能性、などの案を示した。なお、本研究は幹線鉄道整備の課題の構造の分析を主体としており、各案の実現性の検証については今後の課題である。
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