2024 年 25 巻 p. 106-128
本研究では、身体的技術の指導場面における指導者の言語・非言語行動と学習者の反応を解明することを目的とする。特に、能楽教室における仕舞の稽古という相互行為に見られる訂正連鎖の導入に焦点を当てる。マルチモーダル会話分析の研究方法を用いて映像データを観察・記述する。その結果、①指導者は評価表現、動作の指示または指示語の使用により学習者の動作・身体配置に関する問題を示し、訂正連鎖を開始することがわかった。②学習者は指導者の実演をほぼ同時に、もしくはその後に模倣・実践することによって、自身の理解を示すことが明らかになった。本研究により、能楽教室の指導と学習という制度的会話における指導者が訂正すべき対象を提示する方法と、学習者による技術の学びへの志向の表れが解明された。