抄録
家族性地中海熱(familial Mediterranean fever:FMF)典型例は,発熱時に随伴症状として,激しい腹
痛や胸背部痛を伴う.また,一部に関節炎を伴うが,その詳細は不明であり,十分な検討はなされて
いない.遷延した関節炎の検討を行った.25歳,女性.幼児期から腹痛・胸痛を伴う発熱を認め,発
熱時には数日以内に改善する膝関節炎や足関節炎がときどきみられた.FMFの責任遺伝子MEFVの解
析では変異(M6941/M6941)を有しFMFと診断した.コルヒチン内服開始後に症状は消失したが,その
後も軽度の発作がみられた.今回,右膝関節の著明な腫脹と頭痛が出現した.関節液穿刺では,関節
液は黄色で混濁が著明であり,好中球主体の細胞増多がみられた.膝関節MRIは軽度の滑膜肥厚と関
節液貯留を認めたが,骨破壊はなかった.治療はコルヒチン内服継続のみで経過をみたが,その後,
足関節に丹毒様皮疹を伴う関節炎が生じ,全経過約3か月で自然消退した.多関節型の若年性特発性
関節炎や関節リウマチの関節液は,T細胞が多く含まれるのに対し,リンパ球はみられず好中球が主
体であった.FMFの関節炎では骨破壊が起きにくい原因として,症状が自然消退することに加え,炎
症の主因が好中球の活性化によるためと考えられた.