抄録
本稿では,新しい財政ルールの導入が,監視対象ではない指標に与えた影響を捉えるために,市町村データを用いて健全化法と財務状況把握の財務指標に焦点を当てた分析を行った。第一に,財務状況把握のための財務指標をアウトカムとした分析を行った。第二に,健全化法による健全化指標をアウトカムとした分析を行った。第三に,財務指標や健全化指標が,どのような要因で改善もしくは悪化しているのかを調べるために,歳出・歳入項目に着目した分析を行った。市町村の財政健全化の視点から見ると,監視対象である健全化指標は改善しているが,資金繰りや債務償還能力の視点から見ると,監視対象ではない行政経常収支率や基礎的財政収支は悪化している。この結果は,歳出面の増加を上回る歳入面の増加によりもたらされており,地方交付税や臨時財政対策債の増加の影響が大きい。市町村は,現在の債務償還努力に取り組みつつも,将来の様々な危機に備えた積み立て行動を優先していると考えられる。