2022 年 149 巻 p. 93-111
地方公会計改革は,資産債務改革などを目的として進められてきたが,その効果について定量的に分析したわが国の研究は,財務書類作成の有無のみに着目していた。本稿は,総務省主導で2006 年から進められてきた地方公会計改革の効果を,財務書類作成の有無のみではなく,作成された財務書類の活用方法と固定資産台帳整備にも着目して定量的に分析したものである。2010~2014 年もしくは2011~2015 年の市町村パネルデータを用いた分析の結果,財政運営の目標設定に財務書類を活用している自治体で基礎的歳出の伸びの抑制効果が見られること,財務書類を整備する過程で固定資産台帳を整備する自治体において普通建設事業費の伸びの抑制効果が見られることが明らかになった。