2024 年 157 巻 p. 4-31
パンデミックを経験して,国家が無条件に最低限の生活を保障する給付を行うベーシックインカムの議論が世界的に広がり運動体も形成されている。リベラル思想に加え,リバタリアンや新自由主義者,さらにはシリコンバレーの起業家からも支持を集め,先進諸国や自治体の一部で社会実験も行われた。しかし現実の政策となるには,勤労に与える影響の評価と政策を実現するための財源問題の2つが障害となっている。
一方,問題意識を共有しつつ,勤労を条件として減税・給付により勤労インセンティブを高める給付付き税額控除(refundable tax credit)が欧米で導入され一定の成果を上げている。ワークフェア思想のもとで,就労支援策などの積極的労働政策を支える制度だ。英国のユニバーサル・クレジットは,所得情報をリアルタイムで社会保障給付と連携させ,効果を上げている。わが国でもデジタル技術の活用により所得情報と給付をつなげる「デジタル・セーフティネット」の構築に向けて検討すべきだ。