本稿では,コロナ禍を経て社会が一層デジタル化していく中で,ロボットや生成AIの進化が税務に与える影響を多角的に分析する。具体的には,ロボットおよび生成AIそのものへの課税の是非に加え,課税庁側と納税者側(税理士のような実務家を含む)にとってAIとはどのような存在となりうるのか,換言すれば,生成AIの登場によって,双方がどのような影響を受け,今後どのように付き合っていくべきなのかという観点から考察を行う。
ロボットの進化に伴う労働市場の変化への対応として,ロボットに対する課税が提案されている。その主な目的は代理としての課税や規制のための課税である。しかし,「ロボット」あるいは「自動化」といった文言の定義が難しいという問題がある。仮に定義の明確化に成功したとしても,国際協調がなければ,課税の回避が可能となる一方で,ロボット課税を導入した国の技術促進は阻害される。なお,AIそのものへの課税の可能性については,AIが経済的自律性を持つような一定の場合に,課税上の人格を与えるような提案もある。
納税者および実務家にとって,生成AIは有益なツールになりうる。しかし,現状では租税法の複雑さや頻繁な法改正に十分に対応できない。法的責任の観点からも,個別具体的な相談において,AIが税理士の代わりになることは,今は難しい。AIの活用は課税庁にとっても有益で,効率的な税務行政の実現が期待される。ただし,プライバシー保護やデータの収集・管理に関する課題も指摘されている。今後は,課税を取り巻く環境においてAIをどのように活用するかが,より一層問われることになるであろう。