霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: B-1
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口頭発表
頭蓋計測値に基づくSaguinus mystax mystaxS. m. pileatusの相違
*名取 真人小林 秀司
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抄録

Hershkovitz (1977)はSaguinus mystaxmystax、pileatus、plutoの3亜種を認めた。これに対して、Groves(2001)はpileatusを種に格上げした分類を発表した。ただ、この分類には若干の異論もあり、これは他の形質で検証してみる必要がある。そこで、本研究では、頭蓋の計測値を用い、2つの分類群が分離できるかどうか、分析を試みた。ここでは、上記の分析を行うため、判別分析を採用した。判別分析で必要な事前の群は、各タクソンではなく、各地域個体群とした。判別得点をプロットし、対象としたタクソン内ではさまざまな個体群の個体が混在するが、タクソン間においては、そうならないならば、各タクソンは形態学的に異なったグループと認識できるはずである。本研究では、次の産地のサンプルを使用し、分析を行った:Orosa、Santa Cecilia、Quebrada Esperanza、Marupa、Iquitos、Lagarto、Sarayacu、Igarapé Grande、João Pessoa(S. m. mystax)、Tefé (S. m. pileatus)。判別関数に基づいて、すべての標本の判別得点を計算し、2次元に展開した。この展開図によれば、Teféのサンプルは明確に分離できたが、他の個体はきわめて複雑なかたちで混ざり合った。したがって、Teféはpileatusの、他はmystaxの産地なので、それぞれのタクソンははっきりした形態群と認識できる。この結果をもって、mystaxpileatusが種と積極的に認められたわけではない。ただ、種とする仮説と亜種とする仮説がある場合、このような結果はそれを検証する材料とみなすことができる、とWiley(1981)は指摘しており、彼の指摘に従えば、本研究は“pileatusを種とする仮説”を支持したことになる。

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© 2004 日本霊長類学会
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