霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: P-3
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ポスター発表
ヒト手部解剖学的筋骨格モデルの構築と評価
*工内 毅郎荻原 直道中務 真人
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抄録
(目的)ヒトは、物体を安定に保持し、器用に操ることができる。こうした優れた把握能力を獲得するに至った背景には、感覚‐運動神経系の発達と共に、把握に適応的な手部筋骨格系の形態と構造の獲得が不可欠であったと考えられる。しかし、ヒトの手指の形態・構造に見られる特徴が、どのように把握動作の遂行に合理的であるのかは必ずしも明らかになっていない。本研究では技巧的把握動作の形態的基盤の評価を目的として、ヒトの手部構造を解剖学的に精密に模擬したコンピューターモデルを構築した。
(方法)手部の骨格を20節の3次元剛体リンクとしてモデル化した。各指骨の形状をCTで計測し、関節面の形態情報から関節の回転中心や回転軸の向きを定めた。筋は計32筋を考慮し、解剖図を参考にその走行を起始と付着点を経由点を介して結ぶ線としてモデル化した。各筋の最大筋力はその生理断面積に比例するものとした。関節の可動域は、靱帯を模擬したバネモデルにより制限した。
(結果)構築した手部筋骨格モデルに様々な姿勢をとらせ、関節角度変化に伴う骨の相対位置や筋走行の変化、関節の連動性などを文献を参考に評価した。その結果、モデルは手部の解剖学的・運動学的特徴をほぼ正確に再現できていることを確認した。
(考察)物体の把握・操作のためには、指先で適切な大きさ・向きに力を作用させ、物体をバランスさせなくてはならない。しかし手はその形態や構造上の制約から、必ずしも任意の力を任意の場所に作用させることができるわけではない。本研究ではこうした形態の持つ構造制約を定量的に示した。本モデルを用いれば、手部の筋骨格パラメータ(例えば各指・節長の比率、関節面の構造、筋の太さや付着位置)の変化が、器用な把握動作の遂行に与える影響の評価を行うことが可能となる。今後その対応関係を求め、特に母指対向性に着目して、手部技巧動作の形態的基盤の評価を試みる予定である。
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© 2004 日本霊長類学会
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