霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: P-32
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ポスター発表
チンパンジーにおける数字の系列学習
*井上 紗奈松沢 哲郎
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抄録
ヒトとチンパンジーの記号操作を直接比較するために、アラビア数字を媒体とした数概念の研究をおこなってきた。被験者はアイ(27歳)。0から9までの数字を使って、その意味や順序や記憶を調べた研究である。本研究では、クロエ(23歳)とパン(20歳)を加えた。さらには、それぞれの子ども3個体、アユムとクレオとパル(いずれも3歳)を加え、3組の母子合計6個体を対象とした。課題は、数字の系列学習である。子はまだ完全には離乳していないので、母親と同室しながら、それぞれが個別のタッチパネル付きコンピュータに対面した。第1段階では、画面中央下のスタートのための白丸に触れると、画面に0から9までの数字のうちの1個がランダムにあらわれ、それを指で触れると報酬としてりんご片か干しぶどう1粒がもらえる。第2段階では、1と2の2個の数字があらわれ、1を触れるとそれが消え、さらに2を触れるとそれも消えて、正解のチャイムが鳴り報酬がもらえる。ただし先に2に触れると画面から数字が消えて、ブザーが鳴る。第3段階では、1と2と3の3個の数字があらわれ、123の順で触れれば正解になる。以後、1234、12345と順次数字が増える。こうした数字の系列学習の結果を、経験者のアイと、初心者のおとな2個体と、初心者の子ども3個体で比較した。第2段階の冒頭で、初心者5個体のうち4個体は刺激偏好を示した。つまり、1か2のどちらかを好んで選んだ。残り1個体の子どもは位置変更(右に出てきた数字を先に選ぶ)だった。同じ初心者でもおとなは子どもより速く学習して次の段階に進んだ。経験者のアイは、0を加えて0123456789と10個の数字を順番に選ぶことができる。その反応潜時をみると、最初の1個の数字を選ぶまでの潜時が長く、残りの数字を選ぶ潜時はほぼ一定だった。
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© 2004 日本霊長類学会
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