霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: P-33
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ポスター発表
ヒトにおけるチンパンジーの情動情報の認知
*肥田 床橋彌 和秀泉 明宏長谷川 寿一
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抄録
霊長類、特にヒトは優れた社会的認知能力を持っている。その中でも情動認知能力は社会的認知能力への寄与が大きいが、ヒトと最も近縁なチンパンジーでは、情動の認知過程を詳細に調べた研究は少ない。また、情動認知を近縁な他種間で比較することは情動の進化的基盤を考える上で重要であるが、従来の霊長類における比較研究は記載的なものや情動のカテゴリー判断に関するものが殆どであった。しかし情動はその発信者のみならず、受信者にも生理的な変化や行動の変化を引き起こす働きがある事も知られている。そこで本研究では、チンパンジーの情動情報が、チンパンジー、ヒトの行動に与える影響について調査し、それらの結果を種間比較する事を目的とした。チンパンジーと日常的な接触のない成人20名を対象に、タッチパネルモニターを用いた単純反応課題を行った。図形刺激への反応に随伴させてチンパンジーの情動刺激(表情+音声)を提示する、という試行の流れを反復し、反応潜時を測定した。刺激は(1) scream条件、(2) pant-hoot条件、(3) food-grunt条件、(4) laughter条件、コントロールとして(5) object条件とした。セッション内で刺激条件を統一し、5セッション行った。その後、各刺激に対しての、被験者自身の主観的感情状態(快-不快、覚醒-睡眠)の評定を行った。反応潜時には、各刺激条件の主効果は認められなかった。この事から、今回対象とした被験者群にとっては、チンパンジーの個々の情動表出の分化が不完全である事が示唆された。しかし、object条件と各情動条件で比較した所、最も不快で覚醒度が高いと評定されたpant-hoot以外の3条件で、反応が促進する傾向が見られた。「pant-hootは怒りの表出だと感じた」という内観報告も多かったことなどから、チンパンジーに接触のないヒトにとっての、pant-hootの嫌悪性が示唆された。
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© 2004 日本霊長類学会
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