抄録
(目的)2004年現在日本では12施設で計30頭のゴリラが飼育されており、その全てがニシローランドゴリラである。しかしながら、日本における飼育下のニシローランドゴリラの生活状況に関しては今までほとんど明らかにされてこなかった。そこで本研究では、飼育下のニシローランドゴリラの活動時間配分を検討するために予備的調査をおこなった。
(方法)札幌市円山動物園(オス1頭)、日本モンキーセンター(オス1頭、メス1頭)、名古屋市東山動物園(オス1頭、メス2頭)、東京都上野動物園(オス1頭、メス2頭)で飼育されているニシローランドゴリラを対象に観察をおこなった。対象個体の行動は1分間隔の瞬間サンプリング法を用いて各個体が示す行動型を記録した。記録した行動型は、対象の姿勢や機能に基づいて10の行動カテゴリーに分類し、分析した。
(結果)観察時間のうち?に充てられていた活動時間配分の割合は約19%、「休息」に充てられていた割合は約75%、「採食行動」に充てられていた割合は約13%、「異常行動」に充てられていた割合は約80%だった。社会的グルーミングなどの明確な社会行動は1度も観察されなかった。
(考察)野生下のゴリラは1日の大半を採食行動に充てる。それに対し、飼育下のゴリラでは「採食行動」に費やしていた割合は著しく低かった。これは、給餌された餌を食べ終えてしまうとそれ以上採食行動に費やす対象がないといった、飼育下の採食環境の乏しさが理由の1つと考えられた。また、「休息」の割合は高く、“休んでいる”というよりもむしろ何もすることがなく“座っている”という状態だった。これは、刺激の少なさ、操作対象物の乏しさ、といった事が理由に考えられた。このように活動時間配分には、環境や性別、年齢、群れの構成といった様々な要因が関わってくるため、今後こういった要因に考慮し検討をおこなうことが必要だと考えている。