抄録
(目的)数種の霊長類において、オスの順位と繁殖成功において正の相関が報告されているが、ニホンザルでは相関がないという結果が報告されている。では、どんなオスが子供を多く残しているのだろうか?また、メスは、誰とどのように交尾をして、誰の子供を産んだのであろうか?これらを明らかにするために、嵐山E群の父性解析を行なった。
(方法)餌付け群である嵐山E群を対象として、2002年、2003年春に生まれた23頭とその母親、父親候補である4歳以上のオスから、毛を採取し、DNAを抽出して、11座位のマイクロサテライト遺伝子を決定した。その遺伝子型を用いて、排斥的な方法で父親を決定した。また、2002年秋の交尾期に、発情メスを追跡した。そのうち2003年に出産した11頭の交尾行動を分析した。
(結果)群れの中心にいる上位オスは、全体で2頭のみしか子供を残していなかった。群れの周辺にいる7歳以上のオトナオスが、14頭と多くの子供を残していた。また、群れ外オスも6頭と比較的多くの子供を残していた。在籍年数の短さと子供の数は相関していて、メスの年齢と繁殖相手となったオスの在籍年数にも正の相関が見られた。メスの交尾を分析すると、受胎推定期以外では上位のオスと多くの交尾をしていたが、受胎推定期になると周辺オスとの交尾が増えていた。
(考察)上位オスがほとんど子供を残していなかったことは、現在の嵐山E群の上位オスの多くが在籍年数の長いオスであることが影響していると思われる。メスの選択により、そのようなオスが子供を残せなかったのだろう。メスの年齢と父親となったオスの在籍年数が相関したことを考慮すると、在籍年数の長いオスが繁殖相手として選ばれていない理由は、そのオスが母親になったメス自身の父親である可能性があるためではないかと考えられる。