霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: P-43
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ポスター発表
堅果類の生産量の年次変動が金華山島のニホンザルの行動圏利用に及ぼす影響
*辻 大和高槻 成紀
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抄録
(目的)秋から冬にかけての食物環境は結実の量的・質的な違いによって年次的に変化する。本研究はこのような変化がニホンザルの行動圏利用にどのように影響するかを明らかにする。
(方法)季節を秋(10-11月)、冬(12-1月)、早春(2-3月)の3期に分け、2000年の秋から2004年の早春にかけて、宮城県金華山島のA群を対象に計11回の調査を行った。秋の主用食物4種(ブナ、ケヤキ、シデ、カヤ)の結実量を種子トラップ(n=40)で評価し、これと植生調査および先行研究のデータより調査地内のエネルギー・タンパク質の生産量を試算した。行動圏利用については各調査中に1週間程度の行動観察を行い、スキャニング法で行動割合(採食、移動、休息、社会行動)を求め、また行動圏地図から移動距離および移動速度を求めた。これらの各項目について季節ごとに回帰分析を行い、エネルギー・タンパク質生産量と行動圏利用の関係を評価した。
(結果)果実のエネルギー・タンパク質の生産量は2000年度が最大で、2003年度、2002年度、2001年度と続いた。サルの食性は多く結実した樹種および生産量に対応した:秋には落下果実を、冬から早春にかけては落下果実が残っていればこれを採食し続け、残っていなければ冬芽・樹皮・草本類を採食した。生産量が高い年は、冬に採食時間が長くなり、移動時間が短くなり、移動速度が速くなる傾向があった(回帰分析: P<0.05)。
(考察)行動圏利用は冬には食物量に応じて年次的に変化したが秋と早春には殆ど変化しなかった。これは、冬はもっとも寒いのでエネルギー配分が食物環境に応じて敏感に調整されたためと考えられる。いっぽう秋は食物が豊富に存在するため、また早春は移動コストがベネフィットを上回るためにどの年も同じような行動圏利用をしたと考えられる。
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© 2004 日本霊長類学会
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