抄録
(目的)一般にニホンザルは集合性の高い群れを形成するが、金華山島では群れが2つ以上のサブグループに分かれて活動することが観察されている。本研究では、2人以上の観察者が同時に2個体を追跡し、GPSを用いて両者の空間配置を明らかにすることにより、実際にサブグルーピングと呼べるような現象が起きているのかを明らかにする。
(方法)宮城県金華山島に生息するニホンザルA群を対象に、2003年7月に10日間の調査を行なった。2人の調査者がそれぞれ非発情のオトナメスを個体追跡した。同時にGPSを用いて位置を記録し、10分ごとに2個体間の距離を測定した。2-8時間のセッションを計13回行なった。
(結果)2個体間の距離は、75m以内のものが50%以上、225m以内のものが80%以上を占めていた。一方で、3時間以上にわたって400m以上、最大で1150mも離れた状態を維持するような現象も確認された。このようなケースでは、離れた2つのサブグループはそれぞれ別の泊まり場に泊まっていた。個体間距離の分布には個体間の血縁関係が影響しており、全体的には血縁関係にある個体同士はない個体同士に比べて個体間距離が近かった。しかし、母と娘がそれぞれ異なるサブグループにおいて活動することもあった。
(考察)サブグループ間の広がりは、通常の群れの広がりからは逸脱しており、それぞれが独立に活動していたと考えられる。今後、季節によるサブグルーピングの生起頻度の違い、音声などのまとまりを維持するメカニズムについても検討する必要がある。