抄録
野生ニホンザルの群れが長年にわたって生息していた地域を離れ、遠隔地に新たな行動圏を構えることは、全国各地にその例が散見されるが、きちんとした記録として残されているものは数少ない。
宮城県におけるその具体的な例として、一昨年の学会大会では、群れから分かれた41頭の集団(分裂群)が、これまで全くサルの生息していなかった地域へ直線にして50?以上も大移動し、そこに行動圏を構えた事の顛末を報告した。
今回は、同じ宮城県における別の具体例として、大規模な人為的自然改変による群れの移動について報告する。それは、宮城県で最も北に生息する群れ({崎の群れで起こった出来事で、ダム建設と周辺地域の大規模森林伐採によって、群れは直線にして12?ほど移動し、市街地により近い、これまで全く群れのいなかった地域に新たに行動圏を構えた。
このような、群れの大移動の実際とその要因に関する多くの事例を丹念に集積していくことを通して、日本列島におけるニホンザルの群れ分布の歴史的変遷について、その全貌が明らかになると期待される。