霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: A-13
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口頭発表
繁殖パラメーターのニホンザル餌付け個体群間変異について
*栗田 博之
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抄録
(目的)餌付け個体群は一般に純野生個体群に比べ、繁殖パラメーターが高値を示す。しかし餌付け個体群間でも、食物の現存量や気象条件などの違いによって、繁殖パラメーターに大きな変異があると予想されるが、その直接的な個体群間比較はない。本研究はニホンザルを対象として、出産率と幼児死亡率の餌付け個体群間比較を行った。検証した仮説は次のとおりである。1.出産率は餌付け個体群間(以下、個体群間)で異なる。2.幼児死亡率は個体群間で異なる。3.出産率の個体群間のばらつきよりも幼児死亡率のそれの方が大きい。4.幼児死亡率の性差の表れ方は個体群間で異なる(オスの方が死にやすい個体群とメスの方が死にやすい個体群とがある)。
(方法)資料は高崎山・幸島・嵐山・勝山・箱根の5個体群についての公表文献より収集した。出産率は5歳以上の雌数に対する出生数とした。幼児死亡率は原則として、出生数あたりの生後一年以内の消失数とした。
(結果)1.出産率は個体群間で有意な違いがあった。2.幼児死亡率は個体群間で有意な違いがあった。3.出産率の個体群間の分散よりも幼児死亡率のそれの方が有意に大きかった。4.幼児死亡率に有意な性差が見られる群れはなかったが、死亡率の性差の表れ方には個体群間で有意な違いがあった。
(考察)出産率、幼児死亡率およびその性差のいずれも個体群間で違いがあった。これらはその環境条件(特に食物環境)の違いによると推測されるが、解明には環境条件についての資料収集と分析が必要である。 出産率の個体群間のばらつきよりも幼児死亡率のそれの方が大きかったのは、出産率は雌の栄養状態に大きく左右されるのに対して、幼児死亡率は雌の栄養状態に加えて個体間関係(ハラスメント)など、より多くの要因からの影響を受けるからではないかと推測される。
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© 2005 日本霊長類学会
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