霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: B-03
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口頭発表
野生チンパンジーのパント・フート・コーラス行動
*島田 将喜
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抄録
パント・フート(PH)はチンパンジーに種特異的な音声であり、オスもメスもClimaxを伴うPHを発声する。PHを発声する機能については遠距離にいる特定の他個体をリクルートする機能や、採食場の情報を遠距離の他個体に伝える機能などの仮説が考えられているが、これらは基本的にPHが長距離伝達用の音声であることを仮定している。
 しかし、実際のPH発声行動は近くにいる仲間の発声に自分の声を重ね合わせる場合(コーラス)が多い。この現象は、PH発声行動は、長距離にいる他個体に対してだけではなく、近くの個体の発声といった要因にも影響を受けることを示唆し、これはPHがもつ長距離伝達用音声としての側面だけでは説明できない。
 本研究では、タンザニア・マハレ山塊国立公園で2001年度に実施した、個体追跡法により収集されたオスメス8個体づつのデータをもとに、追跡個体と他個体のPHが同時に発声されるコーラスに特に注目し、コーラス・パートナー間の社会関係やそれが生じる社会的状況を定量的・定性的に分析することで、複雑なコーラス現象の説明を試みた。
 オスの方がメスよりもPHの頻度は高かったが、どちらの性も約半数のPH発声行動が他個体とのコーラスであった。オスはオス同士、メスはメス同士でコーラスすることが多く、オスのPHにメスがコーラスする場合の多くが、アルファ・メールのPHに対するものだった。
 離合集散するチンパンジーのグルーピング・パタンの性差などを考慮に入れると、共にいることが多い性同士がコーラスをしていると解釈できる。これらの結果からPHをコーラスすることを積極的に説明する作業仮説として、コーラスしているその関係をを顕在化する機能がある、という仮説を考えた。顕在化することの利益のひとつは、コーラス・パートナーとの社会的関係を強めることであると考えられる。いくつかの定性的な証拠もまた顕在化仮説を支持するものであった。
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© 2005 日本霊長類学会
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