霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: B-04
会議情報

口頭発表
テングザルメスの移籍
*村井 勅裕
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
ほとんどの霊長類では雄が自出群を出て雌は群れにとどまるというのが一般的であるが、一部の種では雌も自出群を離れるということが報告されている。テングザルは単雄群をつくり、生まれた全ての雄が群れを出てソリタリーになるか雄グループを作ることが知られているが、雌に関しても群を移動することが報告されている。本研究では、マレーシア・サバ州のキナバタンガン川流域で1999年から2002年までの約3年間の研究で直接観察されたテングザルにおける雌の群の移籍について発表する。調査期間中雌の移籍を直接観察できたのは移籍が成功したのが3例、移籍が失敗したのが3例であった。群間移動の失敗例3例のうち、2例は大人雌がそれぞれの群の雄によって連れ戻され、残りの1例は若い大人雌が移動しようとした群の雌からの抵抗によって新しい群に入れないものだった。ただし、この時雄による連れ戻しは見られなかった。雄による連れ戻しは、雌への直接的な攻撃は見られず、音声によるものだけだった。また、成功例3例のうち、2例は若い雌で、移籍後にすぐに交尾をした。残りの1例は特殊な例で、子供を持つ母親がその子供を雄グループに残し、新しい単雄群に移籍した例である。成功例3例とも雄による連れ戻しは見られなかった。全体的として、大人雌に関しては元の群れの雄による連れ戻しがあり、若い雌に関しては連れ戻しが行われなかった。このことから、若雌の群の移籍は父親との近親交配を避けるために行われ、大人雌に関しては何らかの選択がかかったのではないかと推測される。
著者関連情報
© 2005 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top