霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: B-15
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口頭発表
“プロジェクトN”2
2004年度調査における展開
*中務 真人国松 豊辻川 寛山本 亜由美酒井 哲弥實吉 玄貴沢田 順弘
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抄録

近年6Maに遡る初期人類が発見され、人類・チンパンジー分岐後の様相の解明が進むかと期待されている。ところが、人類と現生アフリカ類人猿の最後の共通祖先の姿を巡る手がかりは、1982年のサンブルピテクスの発見以来、事実上増えていない。チンパンジー、ゴリラの分岐年代を巡っては、最近の分子生物学的研究の多くは、誤差を含んで5-8Maの中に考えるものが多いようである。いずれにしても、後期中新世のアフリカ類人猿化石資料が最重要である。この点で、9.7Maのサンブルピテクスの重要性は極めて高いものの、その追加標本は未だ発見されていない。
 こうした状況を打破するために、演者らは2002年にプロジェクトN(ナカリ)を開始した。ケニア、ナカリ山周辺は、後期中新世の動物相を産出することが知られていたが、本格的な発掘、地質学的調査はこれが始めてであった。三度目の調査となる今回、新たに16の化石サイトを加えるとともに、これまでの全化石標本数をゆうに越える300点の標本を収集した。これまで収集された化石の状態は断片化が進んでおり、中型以上の動物の資料が中心であったが、今回は発掘に適したいくつかのサイトも発見し、中型以下の動物資料も発掘・収集した。資料数から見ればウシ科、キリン科、サイ科、イノシシ科、ヒッパリオンなどが多数であった。これまで、数点のコロブス類化石がナカリから報告されていたが、これをはるかに越えるコロブス類の化石が収集されるなど、霊長類化石にめざましい充実が見られた。低歯冠のウシ科動物やコロブス類の存在、サイ科やヒッパリオンの臼歯の咬耗パターンがブラウジングを示唆することから、比較的樹木の茂った環境であったことが推測される。
 なお、調査は京都大学大学院理学研究科生物科学専攻21COEプログラム(A14)、科学研究費補助金(基盤B)16370104の補助を受けた。

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© 2005 日本霊長類学会
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