抄録
昨年の自由集会において、本学会として1985年に策定した「サル類を用いる実験遂行のための基本原則」の見直しが必要ではないかということを提案した。これは、昨今の動物福祉に関する急激に変化する世界的動向から見て、必然といえるだろう。しかしながら、どのような方向へ見直しを進めるかは一義的に決まるものではなく、さまざまな立場を考慮に入れた十分な議論が必要である。昨年は、上記の基本原則が策定された経緯に加え、動愛法の見直しや霊長研での飼育・実験に関するガイドラインの改定といった具体例をもとに、霊長類実験あるいは動物実験に関わる我が国における意識状況を議論した。昨年の議論では、福祉と同時に保全の意識、すなわちフィールド研究に対する視点を取り入れる必要性も指摘された。この点については今後とも議論を進めるとして、今回の自由集会においては、 前者すなわち動物実験と動物福祉という観点にのみ絞り、昨年の議論を進めたいと考えている。そこで、実験用霊長類のユーザーとして高い割合を占めている脳神経科学とバイオメディカル研究の立場からの意見と昨年来進められている動愛法の見直しの現状についての説明をもとに、基本原則の見直しについて議論する。これにより、動物福祉という観点から、見直しをどのような方向に向け、何をする必要があるのかを浮き彫りにすることが可能になるだろう。こうした目的に合せ、今回は十分な時間を取って議論をおこなう予定である。