抄録
(目的・背景)マカクサルBウィルス(BV)はヒトに感染すると致死的な中枢神経系の障害を引き起こす。BVはヒト単純ヘルペスウィルスと抗原的に似通っているため、これまで行われてきた通常のウィルス抗原を使用する方法では、ヒト単純ヘルペスウィルス(HSV)に感染とBV感染とを区別できない。我々はヘルペスウィルスglycoprotein D(gD)のC末端アミノ酸配列が各々のウィルスで特異性を示すことに着目し、BVのgD C末端の11アミノ酸残基からなるペプチド(BVgD-CP)を抗原とした、BV抗体特異的ELISA法を昨年報告した(Mitsunaga et al., Exp. Anim. 53: 229, 2004)。今回、BVgD-CP抗原ELISA法の汎用性を検討するために、異なるマカクサル種の異なる群におけるBVgD-CP抗原に対する抗体の出現頻度を調べた。
(方法)BVgD-CPを、コバリンクプレート上に共有結合させて捕捉抗原とし、BV感染したニホンザル、アカゲザル、カニクイザルの血清/血漿サンプルを適用した。
(結果)マカクサルの種、群によってBVgD-CP抗原に対する抗体の出現頻度が異なり、60%から90%の頻度で抗BVgD-CP抗体が検出できた。
(考察)異なるサル種、群におけるBVgD-CP抗原に対する抗体出現頻度の違いは、抗原認識にかかわるMHC構造の差異、或いはサルに感染しているBV株の当該配列(BVgD-CP部分のアミノ酸配列)の差異によるものだと考えられる。今回用いたBVgD-CP抗原の他にもBV特異的な抗原となるアミノ酸配列のペプチドを探索して総合的に用いる可能性が示唆された。