霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: C-10
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口頭発表
チンパンジー胎児の身体行動の発達
-四次元超音波画像診断装置を用いて-
*明和(山越) 政子平田 聡不破 紅樹洲鎌(関) 圭子竹下 秀子
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抄録
(目的)近年開発された四次元超音波画像診断装置によって、ヒト胎児の行動が鮮明に確認できるようになってきた。これまでの研究で、妊娠20週頃のヒト胎児は、手指を口唇部に挿入したり、手指と手指を重ねあわせたり、手で足先をつかんだりするなど、自己身体を探索する行動を頻繁におこなうことがわかってきた。これらの行動は、自己身体感覚の学習が胎児期から始まっている可能性を示唆する。胎児期の行動の生物学的基盤を明らかにするため、本研究では、四次元超音波画像診断装置を用いて、チンパンジー胎児の行動を調べた。
(方法)現在、林原類人猿研究センターで生活するチンパンジー1個体(ツバキ、9歳)が妊娠中である。妊娠16週より、あおむけになった状態で実験者がプローブをおなかにあて、その間しばらく静止する訓練をおこなってきた。妊娠22週より、プローブから実際の超音波を発し、胎児の身体画像の撮影を開始した。撮影時間は、1日1回8-18分程度とし、週1-2回の頻度でおこなった。現在妊娠24週であり、撮影を継続している。
(結果と考察)ヒト用に開発された四次元超音波画像診断装置によって、チンパンジー胎児の身体行動がヒトと同じ程度の鮮明度で記録できることがわかった。それにより、頭の横幅(児頭大横径:BPD)など、チンパンジー胎児の身体成長に関するデータが得られている。また、行動については、チンパンジー胎児で観察される体位がヒトの胎児でみられる典型的な体位と類似していることがわかった。たとえば妊娠24週では、両上肢を交差させ、顔の前にひじを接近させて前屈する体位をとっていた。一方、口唇部と手指の動きはひじょうに活発であり、口や手指を頻繁に開閉させていた。身体行動にかんする詳細な行動レパートリーについては、現在縦断的なデータを蓄積、分析中であり、ヒト胎児で観察された行動レパートリーとの比較をおこなっている。
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© 2005 日本霊長類学会
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