霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: P-01
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ポスター発表
ワオキツネザルのワカモノの親和的交渉
*宮本 直美
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抄録
(目的)群れ生活の霊長類における未成熟個体の社会関係は、将来の利益を見込んだ投資を反映するものとして考察されてきた。母系社会において、出自群を離れるオスと群れに在留するメスでは、その生活史の違いに応じて異なる社会関係を形成することが予測される。ワオキツネザルでは、類似の社会構造を持つオナガザル類に比して順位変動が激しく、順位継承・維持に機能するとされる血縁同士の援助が稀薄とされる。一方で、メスの親和的交渉の頻度は血縁個体に偏る傾向があることが報告されている。オスでは徐々に群れ周辺部に移行し、オトナオスや同令オスとの交渉が高まるという報告がある。このように、ワオキツネザルでも性による生活史の違いや母系構造が未成熟個体の社会関係に影響を与えていることが示唆される。ここでは、生後2年のワカモノの親和的交渉に焦点を当て、性差について分析、考察する。
(方法)1998年と2003年の調査から、生後2年のワカモノ10頭を対象に、社会交渉のデータを収集した。各個体毎に個体追跡をおこない、2分ごとの瞬間サンプリングで近接個体を記入、その他の生じた社会交渉をすべて記録した。そのうち近接とグルーミングを親和的交渉に分類し、分析をおこなった。
(結果)ワカモノオスとワカモノメスの交渉を比較すると、ワカモノメスの交渉量の方が多かった。交渉相手の傾向を見ると、ワカモノオスは群れの各性・年齢層の個体と同じような頻度で交渉したが、ワカモノメスの交渉相手は血縁メスに大きく偏っていた。
(考察)ワオキツネザルの未成熟個体の親和的交渉には、性差が見られ、性による生活史の違いが反映されていることが示唆された。特にメスは、血縁個体との関係が重要であることが考えられる。
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© 2005 日本霊長類学会
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