抄録
(目的)クモザル(Ateles)は、チンパンジー(Pan)と同様,群れは父系であり,群れメンバーは離合集散を繰り返すパーティー(一時的小集団)で動く。両属とも果実の少ない時期にはパーティーの平均サイズが小さくなることが知られている。この研究では2ヶ月余という比較的短い調査期間中にクモザルで見られた採食とパーティーサイズの変化を述べ,食性とグルーピングの関係を考察する。
(方法)調査はコロンビア国ティニグア-マカレナ国立公園で2002年9月4日から11月16日に行われた。研究の主要な部分は11月9日までに取られた個体追跡記録に基づく。対象はここに生息するクモザルの群れの1つMB3で,その構成は成♂:3,成♀:6,青年♂:1,青年♀:1,幼少個体:4,計15頭であった。
(結果と考察)採食とグル-ピングのパターンは調査期間中徐々に変わっていったが,ここでは9月と10月-11月初旬の2つの時期で比較する。全採食時間に対する割合は9月から10-11月に進むと,果実は62%から28%に減少し花は14%から46%に増大したが,葉の採食時間割合は両時期で違いがなかった。9月の果実採食時間の54%はウルシ科の大木Spondias venulosa(現地名はホボ)で,花は全期間を通じて84%がノウゼンカズラ科の蔓植物Arrabidaea sp.であった。いっぽうパーティーサイズは9月には平均値および最大値が2.5および9であったが,10月以降はそれぞれ1.7および4に減少した。 Association Index (AI)はほとんどいずれのdyadsでも10-11月には下がったが,その程度はメス間でもっとも著しく,約半数のdyadsでAIが0になった。これは10月になってメスの多くが群れの行動域内に分散しているArrabidaea sp.のパッチを含み互いに重複が小さい遊動域を持つようになったからである。