霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: Q-03
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ポスター発表
金華山のニホンザルにおける泊まり場選択
*高橋 弘之
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抄録
(目的)昼行性霊長類の泊まり場選択には,捕食者回避,食物の分布,降雨・降雪・風等の天候,という複数の要因が同時に影響している場合が多い。一方,宮城県金華山に生息するニホンザル(Macaca fuscata fuscata)にとっては,潜在的な捕食者として猛禽類を除けば捕食者はいない。しかも秋に主要な果実が実らなかった年の翌冬の採食戦略は低収益・低損失戦略であり,食物の分布がその冬の泊まり場選択に影響するとは考えにくい。一方,冬には主に西北西〜東北東の風が強く吹く。本報告では,ニホンザルの泊まり場選択と風向・風速との関連を分析した。
(方法)宮城県金華山A群を対象に,1993年1∼3月にかけて群れを追跡し,泊まり場で最初にハドリング行動を発見してから60分間観察を続けた。最後の10分間に簡易風速計を用いて1分毎に風速を計測した。前年秋は主要な果実が不作であり,調査期間中は落下果実をまったく利用できなかったため,低収益・低損失戦略をとっていたと考えられる。金華山灯台の風向風速資料と泊まり場の位置関係および泊まり場で計測した風速と比較した。
(結果)泊まり場観察開始時に晴れまたは曇りだった35日間のうち,南南東もしくは南南西の風のときに尾根の南側を利用したのがわずか3日のみであり,北よりの風のときは尾根の南側を,南よりの風のときは尾根の北側を利用していた。平均風速は灯台で毎秒4.1mだったが泊まり場では毎秒0.2mであり,有意差がみられた。また,調査期間中に複数回利用された泊まり場があった。
(考察)捕食者,食物の分布および天候という要因を除外できると考えられる状況において,A群のニホンザルは風の当たりにくい場所を泊まり場として利用していたと考えられた。また,複数回利用された泊まり場は他の年にも利用されており,群れの財産として世代を越えて受け継がれていくのかもしれない。
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© 2005 日本霊長類学会
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