霊長類研究 Supplement
第21回日本霊長類学会大会
セッションID: Q-08
会議情報

ポスター発表
チンパンジー幼児1∼5歳齢の砂遊びの発達
*武田 庄平松沢 哲郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
(目的)チンパンジー幼児の認知発達分析の一環として、不定型な砂という素材とそれを操作することの出来る簡単な道具数種と自身の身体や他者との関係づけ操作の発達的分析をおこなうことを目的とした。
(方法)チンパンジー3幼児(アユム、クレオ、パル)を被験者として、それぞれの母親(アイ、クロエ、パン)と同伴場面での、砂の対象操作についての実験・観察を行った。実験は、実験者同室と非同室の2つの条件を設定して行われた。各母子・各条件につき30分1セッションずつの実験・観察を、幼児の1∼5歳齢段階にわたって行った。実験・観察は2歳齢段階以降は基本的に3ヶ月毎に行われた。
(結果および考察)幼児の砂の対象操作は、1歳齢では直接身体を用いた操作が主であったが、2歳齢以降は徐々にではあるが道具との関係づけによる砂の対象操作も現れはじめた。この年齢段階での道具との関係づけは、砂を道具に入れるとか道具で砂をすくうといった操作が見られた。3∼4歳齢段階では、道具との関係づけ操作がもう一段階進み、砂を道具ですくい別の道具に入れるといった、道具から道具への移動を伴う操作が見られはじめ、砂の対象操作の階層性が現れ始めた。また4歳齢では、砂を実験者に投げかけるという、自分=砂=他者という砂を介して他者との関係性を構築する三項関係的操作も出現した。またアユムはコップにいれた砂を飲み物に見立てて飲むふりをしたと判断できる操作も行い、この年齢段階で象徴的操作が出現する可能性が示唆された。更に5歳齢段階では4歳齢段階以降に出現した各操作が頻度的な安定性をみせて各被験者に見られるようになった。チンパンジー幼児で見られたこれらの傾向は、ヒト幼児で行った同様の条件での実験結果とも類似しており、対象操作の初期的発達においてはチンパンジーとヒトとの間での系統発生的な違いがあまりないのではないかと考えられる。
著者関連情報
© 2005 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top