霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: A-17
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口頭発表
後期中新世ナカリ類人猿の発見とその意味
*中務 真人國松 豊仲谷 英夫辻川 寛山本 亜由美實吉 玄貴沢田 順弘
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抄録
京都大学、島根大学、ケニア国立博物館の共同調査チームは、2005年、ケニア中部ナカリ地域において、新種と思われる大型類人猿の歯牙・顎骨化石、通称ナカリ類人猿を発見した。その年代は990-980万年前と決定された。これは、分子生物学的研究で推定されるゴリラの分岐年代よりも若干遡る。これまで、後期中新世のアフリカ類人猿は960万年前のサンブルピテクスが知られるのみであったが、新たに別の種類の大型類人猿がほぼ同時代から発見されたことは、現生アフリカ類人猿と人類の進化を研究する上で様々な示唆を与える。
現在、人類・アフリカ類人猿の系統の由来については、ユーラシア起源説とアフリカ起源説が対立している。ユーラシア起源説の根拠は二つある。第一に、中新世のアフリカ類人猿に比べユーラシアの化石類人猿が現代的であること、第二に、後期中新世前葉のアフリカで類人猿化石資料が皆無に等しく、アフリカ類人猿の一時的な絶滅が想定されることである。しかしながら、ナカリ類人猿の発見により、後者については、化石証拠の欠落がサンプリングバイアスをうけている可能性が高いことが示された。また、前者についてもユーラシア化石類人猿と比較されているアフリカ化石類人猿が同時代の種ではなく中期中新世類人猿であるという問題を含んでいる。ナカリ類人猿の系統関係は分析中であり、その四肢骨もまだ発見されていない。この時点でこの議論に最終的な決着をつけるにはいたってはいないが、ナカリ類人猿の発見はこの問題を巡る論争に大きな波紋を与えつつある。この発表では、論争の現状と得られている情報から考えられる可能性についてわれわれの見解を示す。
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© 2006 日本霊長類学会
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