霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: A-16
会議情報
口頭発表
オープンランド横断と二足歩行
*石田 英實中野 良彦高野 智荻原 直道中務 真人国松 豊清水 大輔
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
二足歩行の起源について、これまでに多くの仮説が提唱され、この歩行様式が出現した環境も森林とサバンナに二分されている。この起源についてまだ定説はなく、大きな課題として残されている。ここではアフリカ類人猿の特徴とアフリカの自然環境の変遷を踏まえて、この課題を考察したい。アフリカの類人猿はアジアの類人猿と異なり、大きな群れを作り、ナックル歩行により地上を移動する。ゴリラ、チンパンジーともに森林を生活基盤とするが、食性では前者が地上草食タイプであり、ヒトに系統がより近いチンパンジーが伝統的な樹上果実食タイプに留まっている。
アフリカの自然環境史をみると、中新世前期には豊かな森林環境があったが、中期以後の乾燥化により森林はパッチ化する。このような中で、森林依存の中新世類人猿では地上移動の頻度が増え、その距離も徐々に長距離化していったとみてよい。ことに、果実食にこだわった種では、森林間の往来が高頻度となり、移動距離も格段に長くなり、移動中の捕食者への遭遇回数も当然ながら著しく増加しただろう。こうした中、オープンランド横断中の安全確保が最大の課題となり、この克服に大きく寄与したのが二足歩行の採用ではなかろうか。
オープンランドの横断で、一頭の類人猿が二足で立ち、歩いていても食肉類を脅かす効果は低いものであったろう。しかし、大型のオスが群れをなして立ち上って歩くとすれば、捕食者の目には大型獣として映り、そこに大きな威嚇効果が生まれたと考えられる。このような「群れ型二足歩行」の成功が契機となり、群れ全体が立ち上がり、また、手に小枝や棒切れなどを携え、振りかざせばさらに大きな威嚇効果があったと考えられる。上の安全なオープンランド横断法の発見は、その後、二足歩行への適応をより着実なものとし、オープンランドにおける採食・狩猟へとヒト科の生活様式を変化させたたのではなかろうか。
著者関連情報
© 2006 日本霊長類学会
前の記事 次の記事
feedback
Top