抄録
【目的】 昼行性原猿類による脊椎動物の捕食は報告が少ない。特に、ワオキツネザルによる捕食は、ベレンティ保護区におけるカメレオンの捕食1例(Oda、1996)しか報告されていない。飼育下の実験では、チャイロキツネザルやマングースキツネザルと異なり、ワオキツネザルは呈示された脊椎動物に興味を示さなかったことが報告されている(Jolly & Oliver、1985)。本発表では、新たに観察された2例のカメレオン捕食の事例を報告し、ワオキツネザルによる脊椎動物の捕食の特徴について考察する。
【結果】 カメレオン捕食の事例は、2例ともマダガスカル南部のベレンティ保護区に生息するT1A群で観察された。
(事例1)2001年11月2日、授乳中のオトナメス1頭がカメレオンを捕獲し、採食した。尾と後ろ足を残して採食を終えた。採食時間は11分間だった。
(事例2)2005年12月11日、授乳中のオトナメス1頭がカメレオンを採食しているのを発見した。尾を残して採食を終えた。採食時間は4分間-26分間だった。
【考察】 ワオキツネザルによる脊椎動物の捕食には、以下のような共通した特徴が見られた。1. 季節性がある(雨季の始まり、授乳期に観察されている)2. 性差がある(オトナメスだけに観察されている)3. 価値の高い食物のようだ(採食中に他個体が接近)4. 捕食技術が必要のようだ(頭から採食し、比較的長い採食時間)
Oda (1996) は、ワオキツネザルによるカメレオン捕食が観察された季節について、この時期のカメレオンの体色の変化を要因に挙げた。これに加えて、授乳中のメスが高たんぱく質の食物を選択的に採食する結果である可能性もあるだろう。
なお、本研究は科学研究費補助金基盤研究A (no.16252004、代表者:小林繁男)と京都大学教育研究振興財団(若手研究者フィールドワーク派遣)の助成を受けた。