霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: B-14
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口頭発表
冷温帯のニホンザル成獣メスの栄養バランス:消化率の重要性
辻 大和風張 喜子北原 正彦高槻 成紀
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抄録
(目的) 動物の栄養状態は動物個体の健康状態、成長、繁殖に影響する。とくに季節繁殖者のメスの場合、交尾期や出産期の栄養状態は繁殖の成否に直結する。栄養状態は摂取量と要求量のバランスで決まる。摂取量はそれぞれの食物の栄養成分の消化率に大きく影響されるにもかかわらず、これまでの霊長類の研究では軽視されてきた。そこで本研究では、栄養成分ごとの消化率を考慮したうえでニホンザル成獣メスの栄養バランス(エネルギー、タンパク質)の季節変化を調べた。
(方法) 宮城県金華山島のA群の成獣メスを対象に2004年6月から2005年5月までの1年間、計88日間 (745時間) の観察を行い、採食行動、採食品目およびその採食量を記録した。採食が確認された食物の栄養分析を行い、粗タンパク含有率、粗脂肪含有率、NDF含有率、粗灰分含率を求めた。行動観察のデータ、栄養分析のデータ、および居村 (1998) による各栄養成分の消化率の推定式より各月の一日当たりの代謝エネルギー摂取量と可消化タンパク質摂取量を算出し、先行研究で求められているエネルギー要求量、タンパク質要求量との差から栄養バランスを評価した。
(結果と考察) 栄養成分によって摂取量や栄養バランスのピークは異なり、代謝エネルギー摂取量およびエネルギーバランスは4月と10-11月にピークがあった。これは4月の花と10-11月の堅果類およびキノコ類による。これに対し、可消化タンパク質摂取量およびタンパク質バランスは4月と7月にピークがあった。これは4月の花と7月のキノコ類による。代謝エネルギー摂取量の大きさは日摂取乾燥重量から強い影響を受けたが、可消化タンパク質摂取量の大きさは見かけのタンパク質消化率から強い影響を受けた。以上より、栄養バランスは成分ごとの消化率に強く影響されることが明らかとなった。
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© 2006 日本霊長類学会
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