抄録
マダガスカル、ベレンティ私設保護区において、2004年9 月から2005年9月にわたり延べ10ヶ月、同一群から分裂した、ワオキツネザル2群(C1、 CX)の採食生態および活動性の調査を行った。約13年前に分裂したこの2群は、かつてのコアエリアを分かちあいながら、CX群は自然植生で構成される遊動域に10頭前後の小さな群れとして、C1群は主として人為的植生の遊動域に20頭前後の大きな群れとして隣接して存続している。
ベレンティのワオキツネザルは、タマリンドの大木を主要な泊まり木として利用している。終日観察により特定された泊まり木選択は、両群によって異なっていた。自然植生地域のCX群は、雨季には主遊動域内の木を選択していたが、乾季には主遊動域外に出て、他群の遊動域の辺縁部にある木を選択していた。一方、人為的植生を含む地域のC1群は、調査期間を通じて、主遊動域内の木を選択していた。
果実の利用可能性が少なくなる乾季には、CX群はエクスカーション(他群の遊動域の奥深くまで採食目的で遊動すること)を頻繁に行い、他群の遊動域内にある人為的植生を含む食物を採食することが多かった。それに対しC1群は、乾季でも遊動域内に留まり、採食していたことが多かった。食物の利用可能性の調査では、雨季には多くの果実が、自然植生地帯と人為的植生両方で利用可能であった。
CX群は、食物採取のためのエクスカーションのコストを最小限にする泊まり木選択をしているのだろうか?雨季と乾季にわたる両群の採食内容と利用コドラートの比較、重要採食樹の分布から、ワオキツネザルの泊まり木選択を決定する要因を考察する。