霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: B-20
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口頭発表
金華山における野生ニホンザルメスの繁殖パラメータ:順位および個体数変動の影響
*藤田 志歩杉浦 秀樹佐藤 静枝高橋 弘之辻 大和風張 喜子
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抄録
[目的] 繁殖パラメータは動物の生活史や個体群動態を解明する上で基礎となる資料であり、生態学的要因および社会的要因の影響を受けることが知られている。ニホンザルでは、餌付け群を対象として、餌付けによる繁殖パラメータの変化について調べた報告や個体の繁殖成功度と順位との関連について検討した報告がある。しかし、野生ニホンザルの繁殖パラメータに関する報告例は未だ少ない。本研究は、野生ニホンザルの長期観察データを用いて繁殖パラメータを求め、さらに、順位、個体数変動および群れの違いがこれに及ぼす影響について明らかにすることを目的とした。
[方法] 対象は宮城県金華山に生息するニホンザルで、遊動域が隣接する二群(A群およびB1群)とした。家系ごとに、メスを高順位および低順位に分けた。金華山では1984年の大量死以降1995年までは個体数が増加し、その後減少傾向にあることから、1985年から1994年までを増加期、1995年から2005年までを減少期とした。そして、群れの違い、順位および時期(増加期および減少期)が出産率および新生仔死亡率に及ぼす効果について検討した。またA群については、順位および時期が初産年齢に及ぼす効果についても検討した。
[結果と考察] 高順位メスの方が低順位メスよりも出産率は高く(P<0.005)、新生児死亡率は低かった(P<0.01)。また、個体数が飽和に達したと考えられる1995年以降、出産率は低くなり、新生仔死亡率は高くなる傾向がみとめられた(いずれもP=0.1)。出産率および新生仔死亡率における群れによる違いはみとめられなかった。A群の初産年齢は高順位メスで低く(P<0.05)、また減少期で高い傾向がみとめられた(P=0.08)。以上のことより、金華山におけるニホンザルメスの繁殖成功度は順位に依存し、また個体群密度の増加によって低下すると考えられる。
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© 2006 日本霊長類学会
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