霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: A-01
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口頭発表
野生ボルネオ・オランウータンの社会交渉(短報)
*久世 濃子金森 朝子幸島 司郎
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抄録
(目的) ボルネオ・オランウータンはスマトラ・オランウータンに比べて、生息密度が低く、単独性が強いといわれている。我々はスマトラ・オランウータン並に高い密度で生息するボルネオの個体群を研究対象とし、その社会交渉の頻度や内容をスマトラと比較することで、オランウータンの社会性を決定している要因を明らかにすることを目的として研究を行っている。本発表では、現在までの調査で観察された社会交渉の頻度やその内容について報告する。
(方法) 我々はボルネオ島マレーシア領サバ州のダナムバレー森林保護地域に新しい調査地を設定し、2004年から研究を開始した。一日1個体を観察対象とし、 朝ネストから出て、夕方ネストを作るまでの終日追跡を行い、行動を直接観察による瞬間サンプリング法で記録した。対象個体の周囲50m以内に他個体の存在が確認された時は、個体間距離を10分間隔で目測により記録し、社会交渉が観察された場合は、アドリブサンプリング法で記録した。
(結果) 2005年11月までの3回(計11ヶ月)の調査で、2km2の調査地内において計28頭を識別した(フランジオス3頭、アンフランジオス7頭、ワカオス2頭、オトナメス6頭、ワカメス2頭、コドモ2頭、赤ん坊6頭)。社会交渉の頻度は全観察時間の1%であったが、9頭の個体が半径25mの範囲内で休息する、8頭の個体が同時に同じ木で採食する、といった事例も観察された(それぞれ1日)。
(考察) 通常のボルネオ・オランウータンの生息密度は0.2~2頭/km2であるが、本調査地での生息密度は非常に高く、スマトラの生息密度(6頭/km2)に近いといえる。しかし社会交渉の頻度は高くなく、50m以内に他個体がいる割合はスマトラよりも低かった。今後も観察を継続し、DNA分析によって各個体の血縁関係を明らかにし、ボルネオ・オランウータンの社会性の実態を明らかにすることを目標としたい。
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© 2006 日本霊長類学会
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