抄録
目と目で見つめ合うeye-contactの障害は自閉症の診断基準の1つとして取り上げられている。我々はこのeye-contactをサルを用いた発達障害モデル研究の1つの指標として利用することを検討しているが、その基礎データを得るために観察者に対するカニクイザルのeye-contactが性と年齢によってどのように異なるのかを調査した。
方法:(被験体)カニクイザル(Macaca fascicularis)30頭(1歳、2歳、5歳のオス、メスを各群5頭)
(観察者)男性3名
(装置)前面が透明なプラスチック製の観察用ケージ
(手続き)被験体はランダムな順番で1頭ずつ飼育ケージから観察用ケージに移動された。観察者は観察用ケージの前面からケージ内の被験体の目を見つめ、1分間に被験体が視線を合わせた回数をカウントした。eye-contactのカウントはその持続時間に関わらず、目と目が合ってから被験体が視線をはずすまでを1回とし、観察者の方から視線をはずすことはしなかった。3人の観察者は1人ずつ疑似ランダムな順番で観察し、全観察者の観察が終了した後に観察用ケージ内の被験体を入れ替えた。それぞれの観察者は自らの観察が終了するまで他の観察者の観察結果を知ることができなかった。全観察者の観察結果を平均して当該被験体のeye-contact数とした。
結果: 各群の平均eye-contact数を比較すると、いずれの年齢においてもメスと比較してオスのほうがが多く、また、いずれの性においても5歳でもっとも多くのeye-contactがカウントされたが、性と年齢を要因とした2要因の分散分析を行った結果、性の主効果のみが有意であった(F(2,24)=4.96, P<0.05)。したがって、1歳から5歳のカニクイザルではオスのほうが数多くのeye-contactを示すことが明らかになった。