霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: P-23
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ポスター発表
飼育下チンパンジーにおける放飼場内植物の採食選択
*川地 由里奈森村 成樹洲鎌 圭子南 基泰伊谷 原一
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抄録
(目的) 一般に霊長類の食物の選択基準は栄養価値と結びつけて論じられる。一方、給餌のみで栄養的に充足している飼育下チンパンジーでも放飼場内植物を採食する。こうした飼育下チンパンジーによる植物の採食利用を調べることで、栄養価値並びにそれ以外での選択基準を明らかにすることができる。現在、植物をどのように選択し、採食しているかは分かっていない。そこで本研究では放飼場内植物の利用状況と植生や給餌条件との関係を調べた。
(方法) 対象は林原類人猿研究センターで飼育されているチンパンジー5個体とした。自然植生をもつ放飼場(7400m2)には多様な植物が生育しており、植生調査から植物種の被度を算出した。直接観察、食痕調査、糞分析から食性を調べた。給餌された食物についてはカロリーを算出した。
(結果と考察) 放飼場内で生育している47科165種のうち26科60種の採食が確認された。5個体すべてがいずれかの種を採食した。コシダの葉の採食は通年だったが、ヤマモモの葉の採食は秋と冬に集中するなど、常緑種でも種によって採食する時期が異なった。植物に接近するときの行動の違いによって採食の姿勢や継続性が異なった。各植物種の被度について採食時間と頻度それぞれを比較すると、調査面積の51%~75%を占めるコシダよりも、6%~25%を占めるヒサカキやイネ科(未同定)を多く採食した。給餌量は5個体で1日平均13498g、11138kcalであり、栄養的には満たされていた。すなわち、飼育下のチンパンジーは空腹を満たすなどの必要に迫られて放飼場内植物を採食するのではなかった。植物の単純な量の多少とは異なる基準で、採食する植物種や利用の時期を選択した。以上から、好みなど栄養価値とは異なる選択基準にもとづいて放飼場内植物を利用していることが示唆された。
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© 2006 日本霊長類学会
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