霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: P-28
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ポスター発表
チンパンジーの外部寄生虫除去行動
*座馬 耕一郎
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抄録
チンパンジーはニホンザルと同様に、指を用いた外部寄生虫の除去的行動をおこなう一方で、口を用いた除去的行動も見られる。これまで口を用いた除去的行動で外部寄生虫が除去されているという報告はあるが、寄生虫の種類まで判別された事例はほとんどない。本発表ではタンザニア、マハレ山塊国立公園の野生チンパンジーM集団の除去的行動の特徴と、実際にシラミ卵を口を用いて除去した一事例を報告する。1999年8月から2000年6月にかけてオトナ11頭を対象におこなった調査では、社会的毛づくろいの除去的行動のうち90%以上が口を用いていたのに対し、自己毛づくろいでは約50%だった。これは、自己毛づくろいの場合、身体構造上の制約により、毛づくろいする部位に口を近づけることができなかったためと考えられた。また、自由に体勢を変えることができる社会的毛づくろいでは、口を多く用いていた。それでは口を用いた除去ではどのような寄生虫を除去できるのだろうか。2003年8月から12月にかけてワカモノ9個体を対象におこなった調査では、口を用いた除去後におこなったリーフ・グルーミング行動(葉に口をつけ、その葉を折り曲げて爪を立て、ふたたび口をつける行動)に用いられた葉にシラミ卵が付着していた例を観察した。シラミ卵の中身はなく、卵殻と膠状のリングが残されていた。このことから、チンパンジーには、ニホンザルの指を用いたシラミ卵除去行動と同様に、口を用いてシラミ卵を毛から梳き取る能力があり、また、中身のないシラミ卵も除去対象となっていることが示唆された。また、2003年に観察されたリーフ・グルーミング行動について、その直前の除去的行動の有無および、除去的行動に用いられていた部位(口/手)について報告する。
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© 2006 日本霊長類学会
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