霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: A-04
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口頭発表
ニホンザル青年期の母娘関係に見られる多様性
*山田 一憲中道 正之
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抄録
発達経路(developmental trajectory)の多様性を明らかにすることは、発達研究の目的の一つである。それは、個体の環境への適応戦術を明らかにすることにも繋がる。ヒト以外の霊長類において、青年期は個体の社会的関係が母ザルを中心とした血縁個体から非血縁個体へと広がっていく時期であるとされる。本研究では、ニホンザルの青年期における母娘関係に多様性が見られるのか、その多様性は娘の社会化、特に非血縁個体との毛づくろい交渉に関係するのかどうかを検討した。
勝山ニホンザル集団において、未経産の青年期のメス全11頭(5-6歳)を対象個体とし、10分の個体追跡観察を1個体につき24回行った。観察期間は2001年4月から8月までの43日間であった。
母親との近接や毛づくろいを頻繁に行う個体ほど、非血縁個体と毛づくろいを行うことが少なく、毛づくろい相手数も少なかった。非血縁個体との毛づくろい交渉は、母親が2 m以内に近接しているときよりも、近接していない時の方が高い頻度で生起していた。これらの結果は、母親と頻繁に社会的交渉を行い密接な関係を維持する個体が存在する一方で、母親との社会的交渉が少ない個体が、母親から離れた所で、非血縁個体を含めた多様な相手と社会的交渉を行っていることを示している。母親との親密さの程度は対象個体が毛づくろい交渉にかけた総時間と関係しておらず、母親と親密に関わる個体であっても、親密に関わらない個体であっても、一定時間の社会的交渉を行っていた。
本研究において、青年期のニホンザルメスの社会化には複数の発達経路が存在していることが示された。霊長類にとって、社会的な繋がりは適応価になり、生存や繁殖に有利に作用するとされる。青年期のメスが、母親との親密性に応じて社会的交渉の相手を柔軟に変化させることによって、一定量の社会的交渉を維持している可能性が示唆された。
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© 2006 日本霊長類学会
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