霊長類研究 Supplement
第22回日本霊長類学会大会
セッションID: A-03
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口頭発表
ニホンザルにおける他個体との近接と関連した見回しとクーコールの変化
*鈴木 真理子
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抄録
(目的) 群れで移動するためには、特に分散しやすい状況で、群れのまとまりを維持するためのなんらかの調節が必要であると考えられる。ニホンザルは、常に群れで移動をしており、その群れは比較的個体間距離が広いことが知られている。そこで、群れの分散を、他個体との距離や周辺の個体数の変化とし、周囲を把握するような行動を、視覚的な情報である長めの見回しと聴覚的な情報であるクーコールの回数とし、群れの分散時に周囲を把握する行動が起こるかを調べた。
方法) 調査は屋久島西部海岸域に行動域をもつKawahara-A群を対象に、2005年5~6 月と8~10月に行った。オトナメス5頭を対象に個体追跡法を用い、1分間と5分間の瞬間サンプリングで、最近接オトナメスとの距離と10m以内の個体数を記録した。また、同じ1分間に起こった見回しの有無とクーコールの回数を記録した。
(結果) 他個体が集合している時に比べて分散している時には、見回しが有意に多く起こることがわかった。しかし、クーコールは、分散している時だけでなく、集合している時にも頻度が高くなっていた。クーコールに関して、さらにアクティビティーに分けて分析したところ、他個体が集合している時の発声頻度の高さは採食中のものであり、分散しているときの発声頻度の高さは休息中のものであった。
(考察) 分散している時に周囲をよく見回していることから、ニホンザルは群れが広がったときに他個体の空間配置を視覚的に把握していることが示唆された。また、休息中に分散している時に発声頻度が高いことから、他個体が離れていくような場面には発声によって自分の位置を知らせ、他個体の発声を促すことで、聴覚的にも把握している可能性が示唆された。これらの手がかりが、ニホンザルにおける空間的な広がりを保った群れの移動を可能にしていると考えられる。
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© 2006 日本霊長類学会
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