霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
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自由集会
遺体科学がゆく
*遠藤 秀紀
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p. 2

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抄録
 遺体はただの研究材料ではない。いかなる遺体も喜んで譲り受け、目の前に現れた遺体から最大限の知を導き出すのが、遺体を研究するプロの責務だ。ゾウもクジラもネズミもコウモリもそしてサルたちも、わけ隔てなく収集し、文化の源泉として未来永劫の安住の地を確保していく。そして遺体と社会との幸せな間柄を探る姿が、遺体科学の本質にある。今年も遺体科学の集いを開きたいと思う。二つの演題を用意してみた。
 「標本付帯DICOMファイルのサーバー常置へ向けて」(遠藤秀紀)・・・京都大学霊長類研究所の骨格標本情報がウェブ公開されつつある。続いて、標本のCTスキャンによるスライスデータをDICOMファイルで公開したいと考えている。ファイルは、解析目的に合わせ、ボクセルやポリゴンに変換して思いのままに使うことが可能だ。そして何より大切なのはプロジェクト全盛の世の中で必ず表出してくる受益者負担や説明責任という魔物を一掃し、文化の発展のために、完全なる自由の下にデータを世界中で楽しんでもらうという理念だ。
 「microCTを使った骨格内部構造の観察-データの蓄積に向けて」(江木直子)・・・骨格内部構造についての機能解釈は、切断断面やx線影像にもとづいて内部構造の観察は行われてきたが、破壊的な方法で観察できる骨格標本には限りがあるといった技術的な限界があった。近年、microCTなどの透過計測機器は,骨格の微細な内部構造の非破壊的観察を可能にした。しかし、研究例は少なく、今後骨格内部構造の機能仮説を検証するには、広い分類群で様々な骨格の内部構造の形態データを蓄積し、その多様性と普遍性を見極めていくことが必要になるであろう。本発表では、現在までにmicroCTを用いて行った内部構造の観察をもとに、その撮影方法や解析についての実例をあげ、様々な骨格の内部構造データの蓄積に向けての方法を探る。
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© 2007 日本霊長類学会
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