抄録
【背景・目的】サルBウイルス(BV)はヒト単純ヘルペスウイルス(HSV)と同じヘルペスウイルスに属し、マカクザルでのBV感染はヒトでのHSV感染と同様に、普段は潜伏感染している。一方、ヒトがBVに感染した場合致死となることがあるために、マカクザル飼養・実験施設ではBV感染動態の把握・管理が課題となっている。潜伏感染するヘルペスウイルスの再活性化の要因として、ヒトのヘルペスウイルス感染研究でストレスが挙げられている。マカクザルBV感染でもストレスや繁殖期との関連が示唆されているが明確にはなっていない。我々は、潜伏感染ヘルペスウイルスが再活性化すると、そのウイルスに対する抗体価が上昇する点に着目し、BV陽性の飼育マカクザルの抗BV抗体価の変動(上昇)を指標に、BV再活性化のモニタリングを試みた。
【材料・方法】BVに近縁のHVP2 (Herpesvirus papio 2)を代替抗原とした改良HVP2-ELISA法を確立し、本研究に利用した。今回、以下のBV陽性マカクザルを対象に、血清/血漿中の抗BV抗体価の変動(上昇)を調べた。1) 空輸されたカニクイザル、2)グループケージから個別ケージに移されたアカゲザル、3) 放飼場(繁殖コロニー)のニホンザル。
【結果・考察】空輸したカニクイザル2頭の内1頭、ケージ移動したアカゲザル4頭の内1頭、および繁殖期間中の放飼場ニホンザルオス3頭の内2頭で抗BV抗体価上昇が観察された。今回の結果は、輸送やケージ移動という日常的飼育管理処置がサルにとってストレスとなり、それがBV再活性化を引き起こす可能性があることを示している。また、繁殖コロニーのニホンザルでは、特にオスにおいて、繁殖期間中にBVが再活性化されることがあることを示唆している。(Mitsunaga et al., 2007. Comp. Med. 57: 37-41)。