霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: A-21
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口頭発表
和歌山県におけるタイワンザルとニホンザルの交雑に関する集団遺伝学的研究
*川本 芳川本 咲江川合 静齊藤 梓濱田 穣毛利 俊雄國松 豊大澤 秀行後藤 俊二和 秀雄室山 泰之森光 由樹白井 啓鈴木 和男
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抄録
 目的:和歌山県で野生化したタイワンザルの交雑ならびに周辺への拡散について、遺伝標識を用いた調査の結果を報告する。交雑群の個体構成、遺伝子構成、交雑度の推移を調べ、交雑の進行に関わる要因を検討する。また、ニホンザル生息地への拡散を調査する。  方法:2003年3月-2006年6月の期間に287個体から採血し、3種類のタンパク質遺伝子、2種類の核DNA、およびmtDNAのタイプを分析した。全体を4期に分け、交雑状況の変化を比較した。一方、周辺地域への拡散調査では、南部のニホンザル生息地である日高川町と田辺市で採取した30試料のmtDNAを分析した。
 結果:ニホンザルと判定されたのはオトナオスのみで、周辺地域からの移入個体と予想された。群れ生まれの82-94%(全期平均は87%)は交雑個体であり、交雑が進んでいることが予想できた。常染色体遺伝子のカウントからニホンザルの遺伝子頻度は0.44-0.61(全期平均0.50)と推定され、遺伝子の半分がニホンザル遺伝子に置き換わっていた。常染色体遺伝子では顕著でないが、Y染色体遺伝子では比較した4期でニホンザルタイプの頻度上昇傾向が観察された。拡散調査では、mtDNAに3タイプが区別でき、いずれもニホンザルタイプで拡散の証拠は得られなかった。
 考察:1999年と比べると、交雑群のニホンザル遺伝子頻度は約2倍に増加している。群内で種間の生殖隔離はなく雑種化が進んでいる。交雑度上昇には、外からの遺伝子流動の影響以外に、ニホンザルオスを選択的に再放逐した影響も考えられる。一方、今回調査したニホンザル生息地では拡散の証拠が得られなかった。しかし、世代を重ねた交雑個体が周辺のニホンザル野生群に入り交雑するリスクは高くなっていると予想する。排除事業で交雑群は着実に縮小しているが、完全排除に向けた不断の捕獲と、周辺地域における拡散モニタリングが必要だと考える。
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© 2007 日本霊長類学会
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