抄録
目的:和歌山市・海南市においてタイワンザル(Macaca cyclopis)の野生化、ならびに同種とニホンザル(M. fuscata)の間の交雑問題が発生から10年近くが経過し、交雑個体の排除が県の事業として進められている(『霊長類研究』17:186-187, 291-295)。並行して、交雑の拡散について観察・遺伝学的調査が行なわれている(上掲誌15: 53-60, 17: 13-24)。排除された個体について科学的知見を記録すべく、2003年よりワーキング・グループが構成され、多くの研究分野からの調査が行なわれている。本発表では、捕獲個体の尾長・尾椎数による交雑程度の検討結果を報告する。
方法:03年3月より捕獲が始まり、06年度末までに338頭(含、胎児)が調査されている。剖検時に座高(頭頂から坐骨結節遠位端まで)と尾長(付け根から実質先端まで)をAnthropometerで、切り取った尾のX線写真より尾椎の元から先までの長さをキルビメータでそれぞれ計測した。Zygapophysisの有無別に尾椎をカウントした。
結果:生体計測とX線写真計測による尾長はほぼ同じである(R2=0.98)。相対尾長(座高で基準化)は18.3-95.5%(平均値49.3%)と変異幅は大きい。尾椎数は平均16.2個(Range: 8-24個)で、13~20個で個数別個体頻度は7%以上であり、最大は18個を持つ個体クラスの12.0%である。尾椎数と相対尾長の間には、強い相関が認められる(R2=0.82)。
考察:尾長は多くのマカク種で分類特徴とされ、タイワンザルとニホンザルの尾長は平均値95%、15%と著しい差がある。対象個体は両種の平均値を含む、連続する著しい変異を示し、様々な組合わせの交雑が示唆され、遺伝学的結果に合致する。今後、遺伝学的分析結果に基づいて尾長・尾椎数変異の遺伝性を検討し、交雑程度を評価する方法を示したい。