霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: B-09
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口頭発表
クモザル野生集団における色覚多型の中立性検定と適応的意義の検討
*河村 正二平松 千尋岡部 友吾Melin AmandaAureli FilippoSchaffner ColleenVorobyev Misha
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抄録
これまでに我々はコスタリカ・サンタロサ国立公園に生息するチュウベイクモザル(Ateles geoffroyi)1群を対象に糞DNAを用いて赤-緑オプシン遺伝子型の判定を行い、色覚の種内多型が自然集団に実在することを報告している。また、2003~2005年にかけての8ヶ月間に、2色型16個体、3色型10個体の行動を個体追跡サンプリング法により観察し、合計約60時間の記録を得ている。昨年本学会でクモザル色覚における葉に対する果実の推定視認度と採食成功率との相関から色相よりも明度が果実採食において重要な手がかりとなることを示し、3色型色覚はクモザルの果実採食において必ずしも有利ではないと報告した。しかしそれならばどうやって色覚多型は維持されうるのであろうか。本研究では集団遺伝学的方法により赤-緑オプシン対立遺伝子変異の中立性検定をおこない、自然選択の存在を検証するとともに、行動データのさらなる分析を試みた。赤-緑オプシン遺伝子の全6エクソンについてそれぞれ周辺非コード領域を含む各約0.5-1kb及び比較対照として4つの中立配列それぞれ約0.5kbを群れのほぼ全個体について配列決定し、塩基多様度(2配列間の平均塩基相違数)と塩基多型度(全配列中の多型サイト数を標本数で規定される関数で割った値)を求めた。その結果、平衡選択がかからないと予想されるエクソン1と6では多型性が低く、エクソン2~5で中立遺伝子より10倍以上多型性が高いことがわかった。さらにTanjima’s Dテストの結果も合わせ、平衡選択が確かにクモザルの赤-緑オプシン対立遺伝子変異に働いていることが明らかになった。行動データの再分析に関しては各果実種に対する3色型と2色型の採食効率の差の大きさとそれらの果実の色相視認度の間に相関が認められるかという観点から現在解析をおこなっている。
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© 2007 日本霊長類学会
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