霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: B-08
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口頭発表
クモザル属赤-緑オプシン複対立遺伝子における吸収波長の短波長化とその分子進化過程の解明
*松本 圭史小澤 範宏平松 千尋河村 正二
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抄録
色覚は網膜中の視物質が光を吸収することにより生じる感覚である。視物質はオプシンタンパク質と発色団から構成され、オプシンのアミノ酸配列により視物質の最大吸収波長(λmax)は大きく規定される。多くの新世界ザルはX染色体上に異なるλmaxを示す赤-緑オプシン遺伝子が複対立遺伝子として存在することにより、同一種内に色覚の多様性が見られる。メスは赤-緑オプシン遺伝子がヘテロ接合となれば常染色体上の青オプシン遺伝子と合わせて3色型色覚になるが、ホモ接合となれば2色型色覚になる。X染色体を1つしかもたないオスは全て2色型色覚になる。これまで赤-緑オプシン遺伝子は、数多くの遺伝子改変-機能解析がおこなわれてきた結果、3つのアミノ酸サイトにおけるアミノ酸の組み合わせでλmaxを予測できることが知られている。この予測は脊椎動物のほぼ全ての赤-緑オプシン遺伝子に当てはまり、これまで明らかにされた新世界ザルの赤-緑オプシン遺伝子においても例外は見られていない。我々はこれまでにコスタリカ・サンタロサ国立公園のチュウベイクモザル(Ateles geoffroyi)自然集団を対象に赤-緑オプシン遺伝子を単離し、それらに2種類の対立遺伝子があることを示した。アミノ酸配列からλmaxを予測するとそれぞれ、560nm、552nmであった。しかし、培養細胞を用いて視物質をin vitroで再構成することによりλmaxを決定したところ、それぞれ553nm、538nmであり、予測値よりも大きく短波長シフトしていた。これは脊椎動物を通じてはじめての明瞭な例外であった。このような波長分化はクモザル科の進化のどの時期に、どんなアミノ酸置換により生じたのであろうか?これらの点につき本発表ではこれまでに得られた結果を報告する。
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© 2007 日本霊長類学会
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