抄録
ニホンザルのコドモの移動可能な物を伴った社会的遊び(SOP)の典型的な相互行為のタイプとして、「ターゲットの物を巡って生じる追いかけっこ」(PCT)がある。04、05年に餌付け群の嵐山・幸島と野生群の金華山で調査した結果、SOPはすべての群れで観察されるものの、PCTは餌付け群では観察され、金華山では観察されなかった。調査期間中、金華山で観察されなかったのは、「1つの物を遊びのターゲットにする」相互行為そのものがほとんど生じないためと考えられた。餌付け群では採食の対象にならない物がSOPに伴われるのに対し、野生群では採食の対象物が伴われた。後者の場合、遊びの相互行為そのものが抑制されるが前者では抑制されない。餌付けの増加は、単にコドモの数や余剰時間の増加等をもたらしその結果、社会的遊びの増加をもたらす一方、遊びを構成する相互行為の可能性そのものにも影響を与え、PCTのような特定の遊びのタイプが集団内に定着するのに寄与すると考えられる。